書評記事

書評 「命もいらず 名もいらず 下」を投資家の立場から解説します

投稿日:2019年7月7日 更新日:

shige
株式投資で役に立ちそうな言葉は小説の中にもあります。 今回はそれを紹介してみたいと思います。

命もいらず 名もいらず 下 明治編

 5.0

命もいらず 名もいらず 下 明治編

日々の雑事にも一喜一憂せず堂々と生きる主人公に圧倒されます。

当方は時々読み返して気を引き締めています。

この下巻は幕末の3舟の1人、「山岡鉄舟」の全盛期から晩年までを扱った内容です。

幕府側だけではなく新政府側からも一目置かれる彼の生き方は、現代人にも大いに参考になります。

 

明治維新を陰で支えた功労者、山岡鉄舟

敵方からも一目置かれる存在の山岡鉄舟

山岡鉄舟とは

飛騨高山出身の幕臣。

一般的に江戸城無血開城は勝海舟と西郷隆盛の談判によるものと言われているが、最後の将軍・徳川慶喜の命令により鉄舟が事前に西郷と交渉していたことによる功績が大きい。

維新後は宮内庁に出仕して天皇の教育係を務める傍ら、剣術で後進の指導に精を出したり、多くの揮毫を残した。

不運だった将軍慶喜

実はこの人の功績は大きいと思う 最後の将軍 徳川慶喜

言わずと知れた 薩摩のヒーロー 西郷隆盛

不動の人気 西郷隆盛

 

泰然自若として生きた山岡鉄舟を扱った作品「命もいらず 名もいらず」

壮年期から晩年までです。

 

著者情報、出版

山本兼一

1956年、京都市生まれ。出版社勤務を経てフリーランスのライターに。1998年「信長を撃つ」で作家デビュー。2004年、「火天の城」(文藝春秋)が第11回松本清張賞を受賞。同作品は映画化される。また「利休にたずねよ」(PHP研究所)で第140回直木賞を受賞しベストセラーになる。

2014年2月13日没

 

出版

NHK出版   2010年3月25日

 

概要

「大政奉還後の徳川慶喜の謹慎」、「徳川家の静岡移転」、「牧の原台地の開墾」、「天皇の教育係」「浅利義明との決闘」

「晩年」というのが大きな話の流れです。

黒船来航を境にして多くの人間が過去にしがみつき、消えていく中で鉄舟は「無欲と本気」な心でブレずに生き抜き、ついには敵方からも尊敬を受け明治天皇の教育係にまで上り詰めます。

そんな姿はあの西郷隆盛に「命もいらず、名もいらず、金も官位もいらぬ者は始末に困りもす」と言わしめるほどでした。

「手段と目的をはき違えるな」、この本を読んでいるとそんな鉄舟の言葉が聞こえてきそうです。

 

以下の3項目は印象に残ったキーワードです。

 

キーワード

「心が静かな時に方針を思い定める」

剣の達人でもあった鉄舟がどうしても勝てなかった相手、それが浅利義明です。

 

浅利義明とは

浅利又七郎義明。江戸時代末期から明治時代の剣術家で幕末の剣豪の中でも随一と言われるほどの人物。

初対戦時、190cm、105kgという鉄舟がいくら打ちかかっても歯が立たなかったほどの達人。

 

鉄舟が浅利の幻影に悩まされていた頃、平沼専蔵という横浜の貿易商人が鉄舟の家を訪ねてきました。

その時の平沼の言葉が鉄舟にとって大きなヒントとなったのです。

自分の気持ちがすっきりしているときに、しっかりと方針を思い定めておいて、あとは、その時の小さな値の動きなんかに拘らず、ずんずんと商売を進めました。そうするようになってから一端の商人になれた気がします」  p343より

 

この言葉をヒントにして鉄舟は都合よく無傷で勝とうとするから返って身動きができなくなってしまうんだ。相打ちでいいんだと悟ります。

藤田晋氏のインタビューでもあったように、儲けようと思って身分不相応な額の株式を持てば狼狽して胸がドキドキする。それはもはや投資ではなくギャンブルになってしまっている証拠です。なくなってもいいと割り切れる程度の保有数でいることが重要なんですね。

儲けようとして胸がドキドキする

深追いする

売るタイミングを逃す

大きく値下がりする

大損する

 

カフェでアイデアを考える

カフェでリラックスしている時は、心が静かですよね。

 

ポイント

・自分の都合で物事は動かない

・平常心の時に考えをしっかり決めておく

・無欲が最強の戦術

 

「心が未熟なものは何をやっても中途半端になる」

徳川家の静岡移転の画策をしていた頃、鉄舟は「変えてよいもの、変えてはいけないものは何だ?」と考えます。

幕府の衰退を嘆く旗本は多い。でも盤石だった徳川の時代は終わり、江戸城も広大な領地も人民ももはや徳川のものではなくなった。

この世に絶対のものなどない。それでも変えてはいけないものがただひとつある、「おのれの精神(こころ)」だ、と鉄舟は結論付けます。

 

 

人を人として生かしているのは、ただひとつ、おのれの精神(こころ)だ。こころが貧しい者は、何をやっても中途半端にしかできない。官軍であろうが、賊軍であろうが、そんなことは関係がない。こころが熟し、髙き志を持つ者は、ついにことを成すことができる。波乱万丈の時代に遭遇した旧幕臣たち、また、官軍の男たちを見ていて、そう確信した。             p157より

 

ここでいう「こころが熟す」とは”これだと思ったものを見つけたら明確な結果が出るまでやり続ける事でしょう。

でも旧幕臣たちや官軍の男たちはそれができずただなんとなく惰性で生きてきたんだと思います。

株式投資で言えば

自分の投資方針を忘れてわずかな値下がり、値上がり、また無責任なコメント欄を読んで保有株を売ってしまう事になります。

 

・自分の投資方針はいつも確認する

・四季報や会社が発表するIR情報で裏付けをとるようにする

・不毛な言葉に近づかない

 

 

何万年前から一切姿を変えない生き物として有名なのはシーラカンスとこのカブトガニ

「諸行無常」なんてどこ吹く風。変わらない物の代表格カブトガニ。

 

 

「時代は変わる」

明治13年になると剣術道場は衰退の一途をたどり存続が難しくなりました。かつては隆盛を誇った「江戸の3大道場」と言われた名門も例外ではありませんでした。

 

 

江戸の3大道場とは

「位の桃井」と言われた士学館

「技の千葉」と言われた玄武館

「力の斎藤」と言われた練兵館

 

特に「技の千葉」と言われた玄武館はこの小説の主人公の山岡鉄舟をはじめ、清河八郎や新選組の山南敬助、藤堂平助が所属していました。ちなみにあの坂本龍馬は玄武館の分道場で学んだそうです。

しかし時代は変わったのです。

 

神田お玉ヶ池の千葉道場は、本所で鯉料理屋をはじめた。神道無念流練兵館の斎藤弥九郎は、代々木村で茶業に従事している。剣術を見せ物とする撃剣興行や抜刀術で糊口をしのいでいる剣客もいた。   P356より

 

 

ここでわかるのは「どんなに技を究めても時代の流れに合っていなければ用なし」になるという事。

 

職人的生き方自体は否定しませんが、それだけでは足らないのです。それこそ片岡鶴太郎の様に変幻自在に仕事を変えていく、ホリエモンのようにいろんな仕事を同時進行で進めて行き、手段と目的をはき違えない事が大切なのです。

 

投資家の立場で考えると

自分の投資手法が古くなっていないか常にチェックする必要があります。

例えばBNF氏の手法は多くの投資家が参考にしていると思いますが、みんなが同じ手法を取ったら利益は出しづらくなります。特に今はアルゴリズム(コンピュータによる自動取引)が多いですから、隆盛を極めた手法は通じなくなっているでしょう。

ちなみにBNF氏の手法は以下の通りです。

「順張り」

  • セクターの主力株を把握し監視する
  • 出遅れ銘柄を発見したらすぐに買いを入れる
  • 連れ高の予測は体得するしかない
  • 毎日銘柄リストを見続けると相場の動きがイメージできる

逆張り

  • 過去の25日移動平均線からの乖離率
  • 相場の雰囲気
  • 出来高
  • ボリンジャーバンド(移動平均線と値動きの幅を表す線)

乖離率は20%~35%のようですが、政治経済の状況、株式投資をしている人の数や質の問題もあって同じことをやっても利益は出せないと思います。

何をするにも常に努力と研究が大事だと言う事ですね。

情報の伝達手段は時代を反映させます。

人が変われば考え方が変わる。考え方が変われば価値観が変わる。価値観が変われば時代が変わる。

 

本の話に戻すと

鉄舟も龍馬も剣の達人と言われながら結局は人を斬ったことはなかったそうなので、その辺の見極めが絶妙だったんですね。

 

 

重要ポイント

・職人的生き方だけでは人生ハードモードになる

・副業などでリスクを分散させる

・「目的」に向かって行動しながら、「手段」は変えていく

 

「お金から解放されて自由に動けるようになる」という目的のために、「仕事、副業、株式投資」という手段を使う

当方の場合はこう解釈しています。みなさんもそれぞれ独自の解釈をしてみてください。

 

江戸の3大道場の師範たちも維新前からリスクヘッジで茶業などをやっていれば、また状況は違っていたのではと思いました。

 

まとめ

今も昔も、人間のやっていることや大切なことは変わらないと言う事実がバシバシ伝わってくる内容でした。

「事を成したかったら無欲でいる事。そうすれば自然とチャンスはやってくる。」逆説的ですがそれをこの本で学びました。

力まずに粛々と毎日を過ごしていければそのうち目標を達成できると信じて過ごしていきましょう。

「命もいらず 名もいらず」という本は上巻もあるので興味のある方はそちらも読んでみてください。名言がたくさんあるのでお勧めします。機会があったらこのブログでも紹介したいと思います。

スポンサーリンク

スポンサーリンク

スポンサーリンク

  • この記事を書いた人
  • 最新記事

shige

名前・・・shige 年齢・・・アラフォー 職業・・・自動車部品加工の町工場勤務 居住・・・愛知県 最終学歴・・・音楽の専門学校中退 目標・・・10年以内に東海道を一息で歩くこと 経歴 もともとはギタリストになりたくて専門学校へ通うが挫折。その後アルバイトと無職の期間を繰り返し35歳にして現在の会社の正社員となる。株式投資自体は20代の半ばにホリエモンの一連の行動で興味を持ち、デイトレを1年やったことが始まり。しかし100万円損をして10年ほど株式投資から遠ざかる。 現在はファンダメンタルズ長期投資にスタイルを変更してポートフォリオ全体でわずかながらプラスの成績を継続中。

おすすめ記事

株式投資関連の記事まとめ 1

「手間のかからない方法で稼ぎたい」 「定年無しで働き続けるのは嫌だ」 それは人間ならまともな感覚だと思います。   これからの日本は確実に働くことへのハードルが上がります。昔と同じ「労働は素 ...

本は最高のフロンティア 2

金融関連の本を中心にした書評のまとめです。 投資法は日進月歩で変化していますが、自分の型を作る上で過去の情報を知ることは絶対に必要だと思います。 まだまだ数が少ないですが、どうか参考にしてみてください ...

多くの人が働いている中小企業の代表格、下請け 3

働き方やその他の記事のまとめです。 以前の日本と比べ労働環境課が悪化する中、日ごろ感じていることを読んで頂いた方の参考になればいいなと思います。 ただ働くだけでなく、自分の考えを持つ必要がある。 &n ...

-書評記事

Copyright© 当方見聞録 , 2019 All Rights Reserved Powered by AFFINGER5.